チーズ巻は違うだろう

お中元にヤマサのちくわが送られてきた。付け合わせにワサビ漬けがあって、それと共にちくわを食べると美味なことがわかった。ちくわ自体は、それほどうまくもなかった。昔は、ヤマサのちくわはうまかったものだ。近所のスーパーで買うものとは格の違いがあったと思う。
先程、チーズ巻を食べた。なんか違うなと思った。何気なく袋を見ると、「お客様相談室」という文字が目に入った。別にヤマサに相談するようなことは何もない。まずかったり腐ったりしていたわけではない。それなのにどうして私がヤマサに相談しなけれぱならないのだろうか。これでは私が何か「相談」しなくてはいけないみたいではないか。おかしなことだ。そんなことするわけがない。
ふと、豊橋の「お客様相談室」を思い浮かべてみた。明るい陽射しの中、40絡みの色っぽい姉ちゃんが、鼻くそでも丸めながら、午後の紅茶でも飲んでいるんだろうか。ヒマ過ぎて出会い系にカキコしているかもしれない。それもいかんな。ダメだ、ダメだ。電話することにした。
「はい、ヤマサ、お客様相談室でございます」
「こんにちわ。オズノといいます」
「オズノさんなんですね。私、山下と申します」
「縁者の方ですか」
「おほほ、違いますのよ。よく、そういわれますが」
「ところで、御社のチーズ巻のことなんですが」
「いかがいたしましたか。何か問題でも?」
「いや、問題というんじゃないんだな。そちら、苦情処理じゃなくて相談室ですよね」
「左様でございますが」
「相談していいんですよね?」
「はあ。あの、身の上相談とかはなさらないでくださいね」
「違いますよ。チーズ巻のことです」
「で、チーズ巻が何か」
「違和感があったんです」
「違和感? どんな」
「これはヤマサが作るべき商品じゃないんじゃないかと感じたんです」
「あー、ずいぶんナイーブな内容なんですね。上の者に替わりますので、少々お待ち願えますか」
「ちょっと、待って、山下さん。あなたはこれまでいつもそうやって人生の問題から逃げてきましたよね。それじゃダメなんですよ。わかりますか」
「あのー」
「はい?」
「あんた、なに?」
「あんたは何なんだよ。お客様相談係りだろ。なんで問題から逃げるんだ」
「逃げるとかじゃなくて、システムなんです。キャパ以上のことをやったら怒られるんです」
「チーズ巻があんたのキャパ越えてんのかよ」
「だったら言ってみれ。ウチのチーズ巻のどこが不満なんだ」
「違和感と言っているでしょう。天下のヤマサがねえ、チーズ巻なんておかしいんですよ。そんなのカマボコに任せときゃいいんです。どうして竹輪一本で勝負しないんですか」
「大きなお世話だろう、そんなこたあよ。うちらだって生きてかなきゃなんねぇんだしさ。るっせーんだよな」
「なんでプロセス・チーズなんですか」
「はあ?」
「穴があるから何か突っ込んどきゃいいみたいな感じを受けるんですよ」
「穴があったら、***でもなんでも突っ込んどきゃいいんじゃね」
「山下さん、冷静になって。これ、録音していますよ」
「るせーな。当然、こっちだって録音してるよ。室長がさあ。こういうの好きだったりすんだよ。わかりる?」
「オイ、山下、そんな答えはないだろう。客が相談しているというのに。下ネタに落とすのか」
「オズノさんは、お嫌いですか」
「違うんだよ。ヤマサだったらさ、中に入れるチーズは、ゴーダとかチェダーとか、三色揃ってますくらいやって欲しいんですよ」
「三色になってないじゃない。もうひとつ上げなよ」
「おまえ酔ってんのかヤマシタ」
「酔っては、いない」
私はその時、三つ目のチーズの種類がどうしても思い浮かばなかった。
「思いついたらまた電話するからな、ヤマシタ」
「いらねえよ。かけてくんじゃねえ」
「おまえお客様相談室だろう」
「だから何? すべての問題を解決する魔法使いじゃないよ私は。上からもそれでいいと言われてる」


※この記事は妄想上のものです。私はヤマサの「お客様相談室」に電話をかけていません。
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