100円詐欺? クレジットカードで

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母は認知症だが、100円をカードで使ったらしく、何年も使っていないカード会社から請求があった。母は相当ボケており普段カードを使わないし、使うことができないと言っても過言ではない。それに、100円という切りのいい額面が気になって、カード会社に連絡した。税込み100円などという商品は、考えることができない。あるとすれば、軽微な保険契約等に加入してしまったのではないかという可能性だ。
認知症の者にクレジットカードを持たせていた私が迂闊だったとも言えるが、その進行状態は近親者でも判断は容易ではない。また、なんらの問題も起きていないうちに、家族といえども破棄する話はできない。けれども、考え方を変えれば、今回100円でカードを破棄できたのは、良かったのかもしれない。

まずはカード会社に連絡を取った。何に使ったのか知りたかったからだ。
「通常であれば、利用した店名などが出てくるはずですが、これは請求元が電話番号になっているようですね。こちらでは分かりかねますので、そちらにお電話なさってみてはいかがでしょうか」
と女性オペレーターは言った。まるでうつ病者のような暗く抑揚のない話し方だった。コールセンター病かもしれない。その電話で契約解除することができた。何より支払い口座を既に解約しているため、落ちない。後日、店頭で振り込めと指示された。

次に、問題者に電話した。「ご利用先など」は、BS 03 6743 2266である。たった百円のことで、東京に電話をすることに躊躇したが、継続性のある請求内容の可能性もあり無視できない。
「御社は、どういった業務をなさっていますか?」
「委託を受けて取り立てを代行しているものです」
「これこれの日に使った分は、なんだったのでしょうか」
「それについては、本人を確認することが必要です」
「どうやって? 本人は認知症なんですよ」
「いくつか質問させていただきます」
この時点で、私はあきらめてしまった。面倒臭くなったといってもいい。

今日、カード会社から振り込み用紙が届いたので、早速払い込みに行った。一応の興味で、この店で100円で買えるものがあるかどうかと訊いてみた。店員は首をかしげるばかりだった。
「あ、そうですか」と私は帰るつもりだったが、チーフらしき人を呼んでくれ、その人も親切な応対だった。カード会社に連絡を取ってくれた。実のところ私は適当に切り上げて帰りたかったのだが、その店のハウス・カードなので、少しは違った対応があるのかと期待した。調べて後ほど連絡するということで、私は自宅に戻った。
電話をしてきたのは、おそらくそのコールセンターでもチーフ格の人だろう。回答は明瞭で、淀みなかったが、こちらが訊きたいことに関する答えは一切グレーを通し「わかりません」という明解な回答をくれた。結果として、先日連絡した時のことを堂々巡りすることになった。結局、BS 03 6743 2266に連絡せよという。
「もう、しましたよ。でも、本人確認が必要だというから、やめました」
「でも、そちらが、情報開示の余地を残しているのなら、やってみてはいかがでしょうか」
「どうやって本人確認できるのです? 相手は御社のようなカード会社ではなく、取り立て代行ですよ。そもそも確認できる資料を持ち合わせていない。ははっ。これって犯罪かもしれませんね」
「なんとも申し上げられません」

ここまでは経験談だが、以下は、お楽しみの推測コーナーとなる。
無論、最初は母が使用したものと考えたが、よくよく考えると、もうカードを使うという発想さえできない状態である。母の実使用ではないと推測する。大体、そのカードには本人のサインさえ記入されていなかった。
1 カード情報漏洩が疑われる。今年、大量のカード情報漏洩が発覚した。このカードはJCB系列だが、JCBでも31件の漏洩があったとしている。おそらくこれは事件化した事案だろう。一旦漏洩してその総数が31件であるとするのは、疑問だからだ。
2 なぜ100円なのか? 身に覚えのない高額請求という記事は見る。ただし、この場合、カード所有者が対処をするので、継続的な商売としては成り立ちにくいだろう。けれども、100円であった場合、気づかないか、疑問に思っても払ってしまう可能性がある。
実際、私自身の使用についても、「これ、どこのだっけかな」と訝しむ請求元は多い。利用先と請求会社の名称が違うことは珍しくない。
「ま、使ったんだろう」
と思って払っていたが、認識を改めたいと思う。

今回思ったのは、カードの漏洩情報が売買されている可能性である。高額請求をする者がいれば、低額請求をする者もいるのではないだろうか。高額請求は問題化するが、低額の場合はうやむやになる可能性が高い。実際、私も100円のことで東京ナンバーに問い合わせるのは嫌だった。ショップの店員は、「警察に言ったほうがいいですよ」というヒントはくれたが、100円のことでそんなことをする気にもなれない。無論、消費者相談もだ。その意味では、クレバーだといえる。薄利多売式ネット詐欺だ。
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アマゾンは資本主義のモンスターなのか

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業界の巨人という意味で言っているのではない。文字通りのMonsterという意味である。
ネット・ニュースは暇つぶしに見るが、今読んだアマゾンのコラムに関してはいささか驚いた。情報ソースは田中道昭という人で、リソースはプレジデント・オンラインである。

記事中、大雑把に言ってアマゾンが労働者を抑圧しているという点についてまでは、フムフムと読んだ。
アマゾンは宅配業者を不当労働に駆り立てていると感じる。いつも来る宅配のジイさんが22時過ぎに来ていたことには驚いた。私は、就寝後だったので、荷物を受け取れなかった。こんなことは、これまでなかった。恐らく、朝の7時か8時にはスタンバイしているだろうから、睡眠時間も充分取れはしないだろう。これでは、利用する側も気分が悪い。

記事には、アマゾン自体の従業員も非正規に切り替えているとあった。根拠の明示がなかったが、米国で10万人削減とも書かれていた。
他にも類が及んでいるところはあるだろうから、これはもはや労働の破壊といえるかもしれない。
そうは言っても、労働破壊は日本でも顕著であり、ひとりアマゾンがどうのというお話しでもない。

ソ連を筆頭とする社会主義が好きだったことなどないが、それでも、社会主義自体は資本主義国に影響を与えた歴史があると覚えている。だから、短絡的な言い方になるが、社会主義が倒れたから今の様な労働破壊が起こっているとさえ思える。真空に流れ込むように、資本主義が社会主義を埋めたわけだが、その代わりにやってきたのは、おおよそ非人間的な社会でしかなかった。
比較的大人しくて知性的だった社会主義の代わりに台頭したのがテロリズムだということを、否定できるだろうか。もし世界がパワーバランスで成り立っていると仮定するならば。

私はアマゾンをよく利用する。なにより安いし、大きなホームセンターのどこにあるかわからない商品を探さなくても済む。まとめて自宅まで箱で送ってくれるのは、物凄いサービスだ。しかし、そんなことも誰かの犠牲の上に成り立っている。
米国で首を切られたという10万人は、今後アマゾン・ファンではなくなるだろう。それは10万人のみならず、近親、友人、知人にまで広がるのかもしれない。

しかし、私が本当に驚いたのはジェフ・ベゾスの発言に関してだった。
要約すると、べソスは宇宙開発事業に強い興味を持っており、そのためにアマゾンをやっていると言っていいくらいだと述べているという。合わせて、「地球の将来を考えると人類の何割かは宇宙に住むことが必要になる時代が到来する」とまで言っているという。
これではまるで、よくある宇宙脱出プロットのSF映画ではないか。
肝が冷えた。
これまでは、ニュースで見るアマゾンのゴリ押しも、消費者目線で許していたが、背骨にそんな思想が潜んでいるのならば、怪物の影絵を見ているような心持になる。
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裁判員 専従にすればいいのに

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裁判員候補者名簿に登録させたという知らせを受け取った。
私は裁判員制度自体に反対である。アメリカは独特の歴史風土があるから、陪審員精度を維持できているのだろうが、日本は違う。そのマネをしても始まらないのに、誰が考え付いたのだろう。

残念ながら、これは法的義務なので、原則的には拒否できない。
ただし、呼び出しに応じない者が半数近くに上るという。呼び出しとは、裁判員に選定されるくじ引きに出頭することだ。これには応ずるだけで、日当や旅費が出るので、有休が取れるなら出来るだけ応じるべきだろう。行かなければ損だ。
もし裁判員になりたくなければ、アブノーマルな服装をし、フェイス・ペイントでもしていけば、必ずやくじ引き対象から除外されるはずだ。飲酒して行ってもいいと思う。

私は現在無職である。よって、裁判員制度に専従制が加わるなら、直ぐにでも応募したい。
いつ発生するかわからない呼び出しに、最低で三日以上、長くなれば一週間以上の時間を割くことは、誰しも簡単なことではない。けれども、ハローワークに通っているような無職の人間には可能である。なぜ、これに目を付けないのだろう。就職難に陥っている者への救済にもなる。
無作為抽選の結果、たまたまあなたが裁判員に選ばれましたなんて理想論などいらない。専従の裁判員がいてもいいではないか。裁判官だって弁護士だって専従なのだから。

とはいえ、折角選ばれたので、もしスケジュールの調整がつくのなら、裁判員もやってみたい気はする。おもしろそうだから。
刑事事件限定だから、判決は死刑まで含まれる。そういったことに関わったことによる心的外傷ストレス障害も語られる。けれども、人間生きているうちは様々なことを経験しなければならない。それは避けられないし、それが不幸であっても、私はおもしろいと感じる。

キリーロフ! 生きていも、死んでいても同じさ。

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宝エステート

機械警備の求人募集があったので応募した。
「ちなみに年齢はおいくつでしょうか」
人事担当者は言った。
「51ですが」
「は・・・。何か資格はお持ちですか」
「指教責の1号。機械警備業務管理者」
それだけ言えば、機械警備の人員募集には充分なはずだった。
「あはは。経験がおありなんですね。他に資格は?」
「消防設備士も持っていますが」
「ウチはね、普通の機械警備とは違うんですよ。マンションの管理会社なんで、その対応が主になります。例えばですよ、これから年末に向かいますが、マンションの廊下の吐しゃ物を片付けろと連絡があれば、そんな対応もしなければならない」
「はい」
前職でも、アパート物件が警備対象だったので、多少の経験はあった。特に女性が、合いカギを渡した人間を入れないでほしいとか、感情的な要請をしたりした。そんなことは警察に要請して欲しいのだが、間に管理会社が挟まって懇願されたので、出動せざるを得なかった覚えがある。元より、合い鍵を持っているなど、合法的に入室できる人間を排除することは警備にはできない。明らかな犯罪行為でなければ、警備員にできるサービスはない。通報者が合い鍵で侵入している可能性から考えなければならないのだ。
「あなた、先程消防設備士をお持ちだとおっしゃいましたが、火災報知機の誤作動の要請だってある」
「はい」
無論だが、そんな経験は豊富にあった。この御仁は何が言いたいのだろうか。
「普通の機械警備なら、管理会社に連絡して終わりでしょうが、ウチは管理会社だから、その処置をしなければならない」
「はい」
私は甲種4類を持っているので、一応は自動火災報知設備の設計施工までできる。こちらがどんな資格を持っているのか尋ねもしないで、空論を述べている。
「それにですよ。受水槽の異常とか、普通の機械警備では管理会社に連絡して終わりでしょうが、ウチは管理会社だから、その対処をしなければならないんですよ。おわかりですか」
「はい」
別に、そんな経験がないわけではない。警報装置は、その起因が去らねば復旧しないので、それを待つか、可能なら弁の操作をするまでだ。
そんなことに考えを巡らせて、次は応募手続きの話になるのかと思ったが、
「はい。どうもありがとうございました」
ガチャリと電話が切れた。

全体の荒い応接を考えると、どうも私の年齢が気に入らなかったのだろう。
ところで機械警備員など、5年もやればベテランといわれるほど人員の流動は激しい。あと10年やれる人間が、年齢差別される理由はない。
素人が一から教えてくださいと言っているのでもない。
確かに若いほうが将来性はあるだろうが、さりとて務まらなければ、教育費などで経営コストを圧迫するだけだ。

就職活動をしているのだが、警備業界で人が足りないというひっ迫感を感じる。そのくせ、月給はいくらだというと、15万という。それで人がいないと言っている。
警備業界では、人を人とも思わぬほどコキ使ってもいいというのが常識化してしまったものらしい。
残念ながら、この業界の資格を多数持っているで、それで探していたが、業界を変えた方がいいのかもしれないと思うようになった。
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生きていても、死んでいても同じ

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表題は、ご存知ドストエフスキーの「悪霊」キリーロフのセリフです。
修辞学的に考えて、文節を前後入れ替えると、違った効果が出てしまいます。
「死んでいても、生きていても同じ」
これでは、特攻隊員かなにかのようになってしまいます。
違うんですね。もっと柳が風に吹かれるような、飄々とした態度なんです。
やはり、「生きていても、死んでいても同じ」という境地が、完全な自由をうむのです。

世の中、この冬の年越しをできない人々がいます。
地下街で、さんざクリスマス・ソングを聞かされて、路上で亡くなる人とか。
そんな人がいるからこそ、クリスマスの七面鳥はうまいのかもしれません。
いや失敬。そんな自由人の魂なんて、誰も食えやしない。

けれども、われわれは自由なものたちの肉をほとんど食べなくなった。かれらのフレッシュをもらわなくなった。
鶏、豚、牛。魚もほとんど養殖となりました。
食生活は、貧しくなるばかりです。
味の違いがわからないなら、まあ、微笑ですな。
スマホが便利だよ〜って話ならいいんですけどね。その代わりに失ってしまったものが確実にあるということです。

確かに、進化はしているのだけれど、何も進歩はしていない。
これはドイツ哲学の欠陥です。ヘーゲルとかマルクスとかのね。
交換の思想が入っていない。
むしろ交換の思想はフランス哲学のバタイユ。
さらに進んで、進化で失うものというものを、考えること。

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キリーロフ

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朗読しています

今日は予知夢がありました。その内容については、プライベートな事なので書きません。

ところで、近頃気になっているのが、ドストエフスキーのキリーロフです。小説「悪霊」ですね。
40過ぎると、身近な人がポツリと亡くなります。50を過ぎればポツリポツリ。
年の近い従弟が亡くなったり。今日も近所の同年輩の方が亡くなったと案内看板が立っている。
それで、自分の寿命は一体いつまでなんだろうと考えたりします。
いや、違う。そんなに長くは生きられないかもしれない人生の仕舞い方を考えます。
そんな長く生きられる保証などないし、そう思うのであれば、エロDVDなど始末しておく必要がある。

自殺について考えるのは、生の価値の問い直しでしょう。
カミュだって、執拗に論考しています。カミュの場合はそこから立ち上がってくるのですが、ドストエフスキーのキリーロフにおいては、自殺してしまいます。
ドストエフスキーの自殺に関する考察は、ふたつの問題をとりあげます。痛みと来世です。
ですが、キリーロフはこの問答のなかで、面白いことを言うのです。
「生きていても死んでいても同じになった時、初めて完全な自由が与えられる」
これは、仏教でいう無の境地に近いでしょう。

けれども、仏教で無と言ったって、現代人には全然入ってこない。
むしろ、ドストエフスキーなんですね。

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古史古伝

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朗読バージョン

時代性とでもいいますかね。1980年代には古史古伝ブームがあって、本屋には「謎の〜ナントカ史」といった本が結構並んでいました。
私、結構買って読みました。世界には、まだ少しの人しか知らない秘密があるんだということが、アイデンティティになっていたように思います。帰属意識というよりは、固有性の確保でしょうね。アメリカから、カウンター・カルチャーが入ってきていた。お仕着せではない文化が、そこにあった。
トンデモという言い方が出てくるのは、オウム事件の後だったんじゃないのかな。その意味で、時代性として通底するものがあったと思います。それとは逆方向に走ったのがサカキバラ事件でしょう。外の世界には、何も根を持つことができなかった。コインの裏表のようなものだと思います。

時はながれて、津軽外三郡史は、すっかり偽書として片が付いたと思っていました。ところが、2008年、古田武彦が新しく原本が発見されたとして再出版しています。



まじすか楽園みたいな感じですね。これを要するに、もう元々の偽書なんかどうでもいいので、私が本当のつがる三郡史を出しますということでしょう。あの偽書には、私のアイデンティティーを激しく震わせるものがあったのですってわけでしょう。

あの頃読んだ本の中に、「謎の出雲神族」ってのがありました。これは吉田大洋という人の著作ですが、出雲族の伝承者である富まさおさんという語り部が登場するところがミソでした。途方もない内容なのですが、なぜか司馬遼太郎が産経新聞勤務時代に関りがあったようで、言及する稿を書いています。ということは、司馬もある程度近しく、富氏に根拠を示されたことがあったのではないかと想像します。でなきゃ到底信じられないような話です。
私がなぜ信じたかというと、日本各地に富神社というものが存在しているからです。傍証があるよということです。だからって、富まさおさんの言をすべて鵜呑みにする気もないのです。つぶさに読むとおかしなところもある言説です。

では、なにが面白いのか。オオクニヌシなんて重要な存在じゃなかったと言い放つところ。誰でもそんなことはチラッと考えたことはあるでしょうが、これは固有名詞じゃなくて、職掌名ではないのか。そういう地方長官が何人もいたから、神無月の寄り合いの頃には地方からカミがいなくなったのではないか。もしそうなら、十月のその寄り合いでは、収穫物の均等化が合議されたでしょう。

そうだとすると、よくわからないのが国譲り神話です。単なる地方長官に過ぎないオオクニヌシが、降伏するか否かについて、息子のコトシロヌシにお伺いを立てている。私じゃ返答できないというわけです。
これはある種の政治状況において、コトシロヌシとタテミナカタを矮小化したのだと、富氏の発言からは読み取れます。そのストーリーを補強するために、オオクニヌシの冒険譚を挿入しますが、これは何かの仮託としてあるのでしょう。
古事記や日本書紀の成立情況、またその後の藤原不比等の改編など、それらは歴史書として読むには覚束ない、それこそ偽書といっていものかもしれません。

それと較べれば、まだしも富氏の伝承は、歴史を語っています。大雑把に、出雲の版図は、山陰から近畿にかけてです。
まずスサノオが、砂鉄を奪うために朝鮮から馬を連れてやってきた。上陸地は若狭です。ヒボコもそうですが、若狭から上陸するんですよね。朝鮮半島から、えいやと船を出すと、その辺りに着くのかもしれません。
次に九州からアメノホヒら天孫族が来て、滅ぼされています。この時の王がコトシロヌシです。裏切りでもあったんでしょうか。コトシロヌシは自殺してしまいます。タテミナカタは諏訪に落ち延びます。
次に、やっと神武が来ます。この時の王はナガスネヒコ。神武は海路、難波に攻め入ったのですが、苦戦して熊野に迂回し奈良に進攻します。

まあ、そんなことも、面白いのではありますが、所詮一地方の出来事で、同じ時間軸で並立して関東や東北の歴史も進行していたわけです。むしろ縄文以前は、そちらの方が余程文化程度が高かったでしょう。
群馬の縄文遺跡から、大量の耳飾りが出土しています。数にして千以上。しかも、精巧です。これは商業流通していたと考えねばならず、そのベースとなる社会システムも存在していなければならなかったでしょう。クニがあったということです。文献的には、残っていないというだけであってね。

そうした意味で、鍵になるのはスサノオ以降になると思います。
浦島伝説にも名残りがありますが、スサノオは一旦朝鮮半島に帰ったといいます。
まあ、その以降は、東にちょっといい島国があるらしいぜってことで、中国からどんどん渡来人が渡ってくることになり、畿内に力が貯まっていくわけです。それがこぼれて、東日本の制圧、すなわち日ノ本の創生につながっていくわけです。その段階で消された歴史もあったのかもしれません。古田氏が魂を賭けたのは、その部分だったように私は思います。

そういえば、富まさお氏の息子と名乗る方が、その口承を元に新しく考察を書いたようです。
その後、吉田大洋は、富まさお氏の病床で「実は出雲族は女神としてアラハバキを祭祀していた」と聞かされ、また一冊本を書いちゃっています。
歴史ロマンですね。オレだけが知っていることがあるという。いいんじゃないかな。私は古田武彦をバカにする言説のほうが貧しく見えます。
そういえば、今年、ある神社に参拝して摂社にアラハバキと書いてあるのを見て、胸に懐かしい思い出が広がりました。
あれ、この神さん、本当におらっしゃったの?
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時の轟音

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坂本龍一のレインという曲が凄く好きなんです。ベルトリッチの映画「ラスト・エンペラー」の挿入曲です。曲とも言えない程のハシ曲なんで、当時はビデオ・テープから音楽テープにオーバー・ダビングして聴いていました。
「ラスト・エンペラー」はいい映画ですが、指三本折ってそこへ入れられるかといえば、そういうわけにもいかない。けれども、レインのシーンだけは忘れられない程印象に残っています。清朝最後の皇帝溥儀夫妻が、政治的にまずいことになって飛行機で逃げようとする。エンジンがなかなかかからない。その緊迫したシーンのバックににレインが流れる。観客は「アーッ」て感じで観るでしょう。
坂本自身はちゃんとした音楽家ですから、曲はちゃんと作るんですけど、この曲は断片なんですね。曲とも言えないただのバックミュージック。効果音に近いといってもいいのかもしれない。映画ですから。
ところが、坂本さん、後になって何度もこのレインを自分のCDに再収録するわけなんです。ああ、この人もレインが好きだったんだなと思って、嬉しくなりましたよ。ちゃんとした曲になってないから始末に困っている風も可愛くて。

中澤系の短歌に「三番線、快速列車が通過します。理解できない人は下がって」というのがあります。これは、いい短詩です。フラグメント。断章に近いでしょう。カフカとか、ヴィトゲンシュタインの断章はよく引用されますが、もっとわかりやすい形で人生の哀切を歌い切っている。
駅で電車待ちをしていて、快速列車が轟音を立てて通過する。自分が立っている、各駅停車の鈍行列車しか止まらないブラット・ホームには、その快速の走行物は用がないんです。
今は然程そうでもないんでしょうが、一昔か二昔前までは、新卒で入ったカイシャを辞めるってことは、人生を半ば降りるに近い感じがありました。だからって、人間ですから、イヤだったら辞めてしまうわけです。それで、同じ仕事をしているのに身分制みたいに給料が違うとか、マルクス連れて来いよみたいなね。理解できないけど下がるしかないハメを経験するわけです。
頭が良くてファスト・レーンに乗ってきた人だって、大体50過ぎて哀れな事になります。快速列車に乗り続けられる人は、そんなに多くない、そして、そういう切符がカバンのどこを探してもなかった人たちは、おまえみたいな無駄な高給取り要らねえからって、子会社に飛ばされる。「俺だって会社のために頑張ってきたはずだ」と心の中で言うにしても、理解はしたくないでしょう。

いつだったかなあ、テレビで「笑っていいとも」を見ていたら、岡林信康が出てきて「坂本龍一はけしからん」と怒り始めたことがありました。「アイツはアルバム・コンセプトを他から盗んでいる」とね。
私は坂本ファンだったものですから、じゃあ具体的にどのアルバムなのよ?と当然思いましたし、司会のタモリもそれを訊いたと記憶します。それに対して岡林は、言を左右にして、「音楽家たるもの、アルバム・コンセプトを盗んじゃいけない」と、具体的には答えなかった気がします。
今から思えば、「未来派野郎」だったでしょうね。
リドリー・スコットの「ブレードランナー」から引っ張っている部分があるとは思います。まあ、「ブレード・ランナー」は大傑作ですし、坂本さんがファンでオマージュを捧げても何も悪いことはないとは思うのですが、岡林も、坂本が好きなんでしょうね。そんなところからイメージ持ってくるな、お前はもっと上を行けるアーティストではないのかと檄を飛ばしたのでしょう。

「未来派野郎」は、今でも充分聴ける作品です。ギタリストの鈴木賢司が畢生のプレイをしていますしね。というより、メタファーとしては、もう少し先の時代に照準が当たっていると思います。もうすぐいずれ、AIを持ったロボットが家電として身近になることでしょうから。これはいいアルバムです。時の轟音を、感じさせるじゃないですか。

一応、レインのシーンを張り付けようかと思ってユーチューブを探したんですが、恐ろしいことに冒頭でお話ししたようなシーンでは全くありませんでした。
自分の中で、勝手なイメージを作り上げてしまっていたということに驚きます。何度も見た映画なのに。記憶とか無意識の造作というものは、実に恐ろしきものだと思いました。
でも、小さく思うのです。なぜベルトリッチは、私の幻想のようにやらなかったんだ。
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魂の復権

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一体、中世の熊野詣の熱意は、なんだったのかと思うわけです。ある意味では、場所はどこでもよくって、江戸時代にはお伊勢参りになるでしょう。しかし、それはどちらも天皇制に関わっている。

神武東征。紀元頃、九州の筑紫の野に興った人たちが、何を思って勝手に、近畿地方はおれらのもんだと考えちゃったのか、謎に包まれています。今の常識から考えると、地勢的には、まず中国地方から平定していくのが順当でしょう。けれども、当時、山陰地方には結構強い勢力がいて、容易には平定できなかったとしたら。また、海の民であって海運のほうが得意だったとしたら。
丁度紀元頃、瀬戸内沿海に高地性集落が出現しています。これは海上権の確保が目的されたでしょう。吉野ヶ里の環濠集落にだって、仮想的はあったはずで、あるいは朝鮮半島の勢力から圧迫を受けていたかもしれません。
ケツに火がついた勢力である神武軍は、難波でもナガスネヒコに勝つことはできませんでした。そこで、迂回することを考えた彼らがたどり着くのが熊野です。そこから奈良に進攻した。

私が右翼が嫌いなのは、神武以前はどうなっていたのかということに想いを致さないからなんです。それ以前にナガスネヒコだっていたのに、あなたはなんで神武派なの? 子孫なのってね。まあ、思想みたいな固い話を持ち出せばですよ。

まあ、そう難しいことは考えもせずに、熊野詣はあったのだと思います。昔、神武さんがここから上がって来はったんやという。聖地化されてしまったでしょう。ほだらくとかいとか。
お伊勢参りだっていいじゃありませんか。長い旅して、お伊勢さんでうまいもの食って白い女抱いて。ああよかったなあって。

江戸時代なんていうと、若い女人が庭にたらいを出して昼間っから水浴びしててなんて話があります。今からすると恥ずかしくなかったのかと思いますが、当時は全然恥ずかしくもなかったでしょうね。春画なんか見ても、お乳なんか全然描かれてないでしょう? 性的対象じゃなかったからです。
1970年代くらいの少女漫画でも、私はAカップでペチャパイだから、なんてコンプレックスをよくみました。Bだと威張れるけど、Cは話題にされない。それくらいまでは、板みたいな胸の女性が圧倒的に多かったんだと推測します。
時は流れ、今はDEFGくらいでも普通になっちゃいました。足も長くなったし。30年かそこらで女性の体形が全く変わってしまう。原因は何かといったら、「憧れ」だけでしょう。西洋人みたいにお乳が大きい方が女はお得という。
お乳のエロスと言うのは、西洋人が発見したのだと思います。日本人にとって、お乳なんて上腕二頭筋と同じようなもので、それを見て発情してたらおかしいだろってものだったわけです。
西洋だって、昔の絵画を見ると、お乳は強調されてなんていません。ところが、確か19世紀だったと記憶しますが、お乳ブームというのがありまして、おっぱい丸出しファッションというのが流行ったことがあるののです。ふつうのドレスですけど、おっぱいだけまる見せ。
誰かが、これはええものやなあと気づいたんでしょうね。
そのブームが過ぎると、今度はブラで隠すようになります。隠しといたほうが、商品価値あがるでって塩梅でしょうか。
これは私の個人的な考えですけど、巨乳ブームとか、お尻の代替物ではないかと思うのです。あれ、お尻でしょう?っていうね。サルだってお尻見て発情するわけですから。

魂ってのは、せんじ詰めればタナトスの問題ですけど、エロスとはコインの裏表のような関係にあると思います。一体でしょうという意味です。
お盆には、先祖の霊を迎え送りします。毎年、雨でも降るみたいに、霊が降ってくる。
民俗学的に、盆踊りの時には袖引き合って誰とでも逢瀬を愉しんでよくて、でもそれは多分誰とでもいいというわけじゃなくて、それ以前に目と目があって恋情がチンチンに沸騰した相手だったでしょうけれど、その夜に孕んだ子は許されたというんです。婚姻もないのに、普通にその家で育てられた。
祖先の霊がその子に降りたと考えるのなら、それは美しい考えだと思います。
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吉本隆明の講話

糸井重里の「ほぼ日」で、吉本隆明の講演が配布されていて、この頃毎日聞いている。
吉本は知識人だから講演なのだけれど、聞いていると講話に思える。
ふと思ったのだが、昔のお坊さんは、こんな集いを持っていたのじゃないだろうか。だから偉いと尊敬されていたのじゃなかったろうか。
なにしろ僧とは知識人のことで、お寺はその拠点だったはずだ。自分だけ悟っても、世に関わらないのなら、無用の長物だ。

恐らく吉本隆明くらい語れる人も歴史的に寺には結構いたはずで、その域に達しない人が語っていてもその人がいい人だったら全然大丈夫なわけで。
お寺がそういう場としての機能をやめたから、新宗教などが勃興してオウム事件のようなことになっていったのでしょう。

「フーコーについて」という講話を聞いた。
みなさんも、ご自分の考えを持っておられた方がいいですよと優しく語っている。

日本の平和憲法は、最も進んだものだから、取っておいた方がいいですよ、と言っていた。
私は昔からそんな意見には反対だった。自己矛盾だと考えたからだ。
架空の例として、北朝鮮が自国の抱える歴史的問題を解決するために、日本に攻め入ってきたらどうするのか。これは国際紛争と呼べるものだろう。北朝鮮は過去の歴史において日本から虐げられたと主張することが可能であるし、「これまでは黙っていたが、国際情勢の機が熟した」とのべることもできる。これを国際紛争ではないとすることはできない。
これに対して交戦せず占領されてよいというのであれば、この憲法は自国の存続を半ば放棄していることになるのではないだろうか。
そんなものは、どこかに軽い身勝手さをはらんでいるに違いないと思った。
政治家から官僚まで、社長から部長まで、あるいは課長も係長も、誰も何にも責任を取らないような風潮ができあがってしまったのは、実にこの「軽い身勝手さ」のせいではなかったのか。

フーコーは歴史を層としてとらえたのだという。
別にそんなことは、ヤコブソンとかラカンも言っていたこと。覚えているのは、「快の打ち出の小槌」の中で、欧州では分母がどんどん変わっていくのに、日本は分母が変わらないままだと分析されていたこと。
詳しく言えば、Aという国にBという民族が攻め込んでも、分母のAは基底としてのこる。そして、その国に今度Cという国が攻め込んだら、基底はBになるという議論だ。バームクーヘンみたいな層に歴史はなる。
ところが日本は天皇制が存在するために、分母が変わらないままで、層化しないじゃないかと、1980年に佐々木孝次と伊丹十三は議論していた。

20世紀の隔ても17年過ぎて、上のふたつの議論は冗談のようなものになった。
今では、私は平和憲法でいいじゃないかと思う。お飾りなんだから。
天皇制は、天皇家の負担が重すぎるから廃止すべきだと考えていたが、もう別にいいんじゃないかと思うようになった。高貴な暮らしを経験する人がいてもいいではないか。
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